2020年7月10日金曜日

⑫ホリウッド・ハイウエイ(その2)

昨日泊ったレドンド・ビーチは広大なヨット・

ハーバーと古い石油酌みだしポンプが動いて

いるだけの海岸で、散歩で海辺には行きつか

ない風だった。

用を終えた会社からはタクシーでMW君ちに

行った。

その頃、MW君は西海岸で会社のキーボード

事業が当たって、事業展開に精を出していた。

まだ家族も到着していなかった家では本業とも

いえる自動車産業論の本を書いているらしかった。

手作りのご馳走で少し飲んで、お暇したのが

夜十時。

また、チェッカーフラグを呼んでもらって、

ホリウッド・ハイウエーを北上し始めた。

運転手はその頃増えたアフリカ系移民風だった。

クリスマスも近く「何かクリスマス・ソング

でも歌わないか?」と言う。

知っている歌を一緒になって歌った。

「一杯やらないか?」とウイスキーの小瓶

を差し出した。

「運転中だろ?」「少しだから大丈夫だ」。

彼はレバノンからの移民だと言う。

「英語は来てから覚えた。アメリカ人は

冷たいよ。君の様に話をする人はいないよ」

瓶のまま、ラッパ飲みで交互に。

もうじき北ハリウッドに着くという所で

ソリン・チャージにスタンドに寄って、

再び走り出した時、運転手が「いけない、

道を間違えちゃった」と素っ頓狂な声を

上げてメーターを倒した。

「自分が間違えたのだから金はこれから

先だけで良い」と言う。

「さっきまで150ドルだったのが見えた。

もうすぐ着く、150ドルだけ払うよ」と

言うと、運転手は涙声で「日本人は優しい

なあ、今度飯をおごらせてくれよ」と言った。

「ありがとう。仕事で行けない家族と食べて」

深夜、ハウアード・ジョンソンホテルに着い

たら、レドンド・ビーチでタクシーに忘れた

メモが届いていた。