2021年1月30日土曜日

(65)草枕スケッチ帖⑥



 ⑥


ロンドン近郊で国の防衛研究所を訪問し、航空機


エンジンのロールスロイス社を見学してから


イタリアのピサに飛んだ。


唯一有名なのはピサの斜塔である。


 十二世紀に着工された斜塔と十一世紀建造の


イタリア最古のカテドラル、ドゥオーモと説教


ドームの三つの建築からなっていて、斜塔を


除けば今でも実際に毎日10時の礼拝に使われて


いるという。


 ドゥオーモも斜塔も建設中から傾いてきて、


修正を加えながら百八十年かけて築き上げて来た


という。 斜塔はその後も傾きがひどくなり、遂に


近年さまざまな対策を試みつつある。


 今は立ち入り禁止となっているが、まあのんびり


やるさ、という調子なのであろう。


「これまで数百年もこれでやって来たのさ、どうっ


てことないさ」そんな良さを教えてくれる。


 ドゥオーモには高い天井の上から長いロープで


吊るされたランプがあり、個々の大学生であった


ガレリオ・ガリレイが、講義を聴いていて、この


ランプがゆっくり揺れ続けるのを見て振り子の


法則を思い付いたという説があるそうだが、ランプ


はガリレイがいた頃はなかったともいう。


2021年1月26日火曜日

(64)草枕スケッチ帖⑤

  世紀の名優と言われたローレンス・オリビエが


演じたシェクスピアーの「リチャード3世」の映画


を見たのはいつのころだったろう。


舞台劇をそのまま映画にしたという。


凄まじいばかりの迫力で、無様で強力な悪の力を


見せつける衝撃がロンドン塔を見て蘇ってきた。


 醜いわが身を王とするために、親や兄弟を次々に


陰謀の限りを尽くし亡き者にし、その妻を盗り、


遂には自ら滅ぼされる勧善懲悪の物語が、この


ロンドン塔の中で起こる。


奥深い地下室の排水溝からテームス川に流される


夥しい血の色や白昼野戦の末、半殺しにされながら


止めを刺されない醜い男の痙攣する断末魔を想像


するに十分だ。


シェークスピアが俳優として出演した劇場が当時の


まま再現されたそうだが、大英博物館に収納されて


いるロゼッタストーンをはじめ古代エジプトの略奪


に等しい巨大遺構の数々や美術品を目の前にすると


パイレーツを祖先にするこの国の中では殊勝なこと


である。


 もっとも、日本だって韓国の博物館を見ると、


この国の規模に遥かにお呼ばないものの、倭寇の


時代からの略奪の実績がないわけではない。 




2021年1月20日水曜日

(63)草枕スケッチ帖④


  初めて来たロンドンだが、有名な所は写真や


TV紀行で、何度もお目にかかっていて知った積り


になりやすい。 しかし、これは禁物である。


 何せ見るもの聞くものすべて生き物である。


自分が在ってこそ旅の意味がある。


 ご存じイギリスは今皇室を頂点とする貴族階級


の残った国であると同時に、新しいECの中心メン


バーの一員として(この旅の時期に)政治経済の


主導を担おうとしている。


今回の視察の中でも国を挙げての視点の改革を感


じたが、過去の栄光が足枷になっているのではと


思うことも多々あった。 


シャーロックホームズのパブにも入ってみたが昔


と変わらないのではと思える。


 昔愛読したバートランド・ラッセル卿の幸福論


を思い出しながら現代UKの指導的な若い人たちの


志向はどうなんだろうと思った。


ゴルフや、ラグビイ、ビートルズを生んだ国であ


る。


 ベストセラーズのトップと3位くらいの本を買っ


てみた。「小さな島国からのノート」「ウイット」


と言う本である。まだ読んではいないが、書評抄


を見た限りでは、この2冊は軟硬対照的で期せず


して僕への回答があるような気がしている。

2021年1月14日木曜日

(62)草枕スケッチ帖③


  団体でツアーをしながら報告写真を撮ったり、


スケッチをしたり、買い物を楽しんだりとナ皆


と同じように同時に全部やるのは難しい。


欲張りだから、勢い皆と歩調が少しずつずれる。


だから一人離れた行動で不義理をするときもあ


る。 かと言って、バスに乗り遅れたりすると


もっと大変だから周りの動きも常に視野に入れ


ておく必要もある。


 だから描きたい所でも時間がない所では写真


だけである。 写真を撮ると見たものの細部は


印象には残らない。 5分でも10分でも描けば


柱の数やエンタシスの模様なども思い出すこと


もできる。 写真を撮っておいて、後でそれを


見て描くということもないではないが、これは


あまり楽しいことではない。


 道具はいたって簡単である。表がポストカー


ドになっている上質のケント紙の画帳と携帯用


の固形水彩絵の具、小筆やエンピツやペン、写


真フィルムのケースに入れた水などである。


 自称従軍記者として公式行事以外の絵日記を


綴ってみようかと思っているわけである。


 志は高くても、何せアマチュアだ。 上手く


行く保証もないし、人様の鑑賞に耐えられない


かも知れない。 


ロンドン セント・ポール・カテドラル。

2021年1月9日土曜日

(61)草枕スケッチ帖②


 時差ボケで朝5時過ぎに目が覚めた。


いざロンドン、初お目見えとばかり10階のダブル


ベッドツインの豪華な部屋のカーテンを開くが外


は真っ暗。


しかし、下の方を見るとすでにハイドパーク北側


の道路はデリバリーの車や通勤らしい小型車がヘッ


ドライトを点けてひっきりなしに走っている。


これは日本より働き者だぞ!


地図を見たり、テレビを見たりロンドンの予備勉強


をしている内にモーニングコールそして英国式朝食。


BGMに第9交響曲には恐れ入った。


 本日の行事出発までの時間調整にパークの中のイ


タリア公園を散歩。


なぜイタリアなのか分からないが「ジェンナー」と


書かれた大きい人物像がある。我が子を試験台にし


たと言うあの種痘を開発した人か。


リスが遊び、マロニエの栗が落ちている。


紅葉が始まり、ジョギングの人もたくさんいる。


日曜日の朝だからか乗馬を楽しむ正装した大人子供


の一団が、車道の信号を渡ってパークに入ってくる。


車より馬が優先!リッチなものだ。


外周の歩道では恒例のアート市場が立つらしく、妻


の作品だと言う古い農家を描いた小さい油絵を飾り


付け始めたおじいさんがいる。

2021年1月5日火曜日

(60)草枕スケッチ帖①

 会社晩年のころ業界の各会社代表でワシントンの


米陸軍退役軍人総会に招かれたのを機に世界の防


衛企業を視察歴訪した時の旅日記である。


①成田空港⇒ロンドン


朝9時半成田集合のキツイ達しに、朝寝坊の僕は前


夜からウトウト。 寝不足のまま始発に乗り横浜駅


ホームの自動券売機で成田エクスプレス券を買って


乗り込み、早めの到着。


11:50発JAL401便で飛び立ったのが1時間遅れだっ


た。


燦燦と輝く太陽を追い続けるB757-400上で我々視察


団総勢は食べたり飲んだりの長いフライトを飽きるほ


ど楽しみ、ロンドン・ヒースロウ空港に到着したのが


現地時間19:30頃だった。


飛行時間約12時間半、時差がマイナス9時間と言うか


らジェット機は太陽と駆けっこをして、3時間半


遅れて到着したと言えば分り易い。


詰まり、飛んでいる間は殆ど昼間だったのだ。


空港からバスで、ハイドパーク傍のロイヤル・ラン


カスターホテルに入り、時差ボケ食事間隔のまま、


遅い夕食を取ったのは21時頃だった。


絵:ハイドパーク・ロンドン



  

 


2021年1月2日土曜日

(59)2021新春雑感 

 年が改まった。前年からのコロナ禍は3次感染に達


して益々猛威を振るっている。


政府も経済的打撃を恐れるあまり見通しを誤ったよ


うだ。


庶民としては出来る限り遁世して息をひそめるしか


無かろう。


自分の今年は体調維持が第一の要務だと思っている。


大半は坐って過ごすオフィス回転椅子から立ち上が


るのも一仕事で、机周りではこの回転椅子に乗って


動き、トイレや玄関に行くときだけ立ち上がって


手押し歩行器に縋って歩く有様だ。


当面はこの動作だけでもスクワットなどの筋力改善


で筋力を取り戻したいが老い心が先に立つのは情け


ない。