2013年5月21日火曜日

RCAT(2)

RCAT(2)
L-90のような高射(機関)砲の標的に使う場合は、RCAT本体を目標にすると撃たれて壊れるのを防ぐために、RCATの後ろに長いロープで射撃目標板を曳航させて、これを目掛けて撃つ。
この目標板は実機に近い大きさが有り、且つRCATで曳航できる位の空気抵抗のものだから、軽いメッシュ構造であろう。弾が貫通したことをカウント出来る必要もある。

誘導弾(以後Misslie=MSLと言う)の場合は、射程によって違う。
短SAMと呼ぶ射程が比較的短いMSLの場合の目標板は、当然誘導方式により異なる。
イメージ(可視域や赤外域)方式、赤外方式などの誘導方式に適うものが必要になる。
しかし、実機に近い特性が無ければならないからイメージの場合は実機に近い大きさ、赤外の場合は実機のエンジンが発生する赤外線量が必要になり、速度も実機に近くなるから、標的機が破壊される確率は高くなる。
MSLがアタル確率は、直撃だけでなく、MSLの近接信管(これも方式が色々ある)が作動する範囲に入ったか、で判定される。
だから、高価な標的機も”命がけ”になる。

ある時から、北海道の静内にある特科連隊の対空射撃演習が公開されるようになった。
RCATを使ったL-90高射機関砲や短SAM・MSLの実射撃を視察に多くの報道陣が集まった。
静内対空射場は太平洋に南面した砂浜にあり、両脇には漁港を抱えている、多くの基地がそうであるように、気を使う場所にある。

その日、空はどんよりしていていたが、射撃終了後RCATをパラシュートで回収する協力漁船の準備もOK、沖を航行する貨物船も無く海上の安全もOK、FCS(射撃管制装置)、LCH(ランチャー)、MSLすべて準備OK、でRCATは発進した。

予定どうり、目標RCATはFCSに捕捉され、追尾され、MSLは発射された。
轟音とともに、マッハを超えるスピードで目標との会合点に向かって飛んでいく。沢山のカメラもそれを追う。
数秒後、計器は命中を知らせた。近接信管が作動したことを知らせたのだ。
 
RCATは約25k近接信管命中によりRCATがコントロールを失った。向かって右手の方向へ飛んでいった模様。
ヤバイ!静内漁港か静内川の河口や静内の町がある!
程なく部隊に静内川の河口付近に墜落RCATを発見の連絡があり皆ホッとした。

夕方のNHK・TVニュースで、命中直前までのMSLの順調な飛翔を追った映像が出ていた。
さすがNHKカメラ!沢山の報道陣の中でこの視界が良くない条件で追尾できたのは、NHKだけだったとか。
部隊へスクープで有名だったF社の記者が、命中に疑義を唱えて何度も食い下がったと聞く。
矢張り、カメラ追尾が出来なかったからであろうか。

2013年5月7日火曜日

ラジコン無人標的機 RCAT

RCAT(1)
対空火砲や対空ミサイルの射撃訓練や射撃試験には標的になる標的飛行体が要る。
昔も今も、高射砲の訓練には架空線に吊り下げたり、棒の上に取り付けて人が持って走ったりする模型飛行機などを使う。
標的機の大きさは実物が距離によって作る視角とほぼ同じになるようにする。
遠くにある標的機は小さくなるという原理だ。当然安く作れるが、動く模型や飛行体を標的機として用意するのは大変だ。
インターネットから

アメリカには太平洋戦争の時、既に無線操縦の無人標的航空機があった。例えば戦後日本にも導入されたアメリカのL-90という高射砲の射撃評価をするためにもRCAT(Radio Controlled Air Target) という無人航空機が導入された。
よく言われているのは早い話自動車カローラ級の馬力のエンジンを積んだ(もちろん飛行機だから空冷だが・・)プロペラ機で、胴体の長さが4m弱で翼幅全長が3.5mである。
この機の発進は初めの頃は、丸い滑走路を作ってワイヤーでRCATを滑走路を走らせ、予定の速度に達したら、砲丸投げのように、タイミング良くワイヤーを外して、目的方向に飛ばす。
この発進方法は危ないし、場所が要るので、今はカタパルトで打ち出す方が多いようだ。
飛行距離は最大50kmくらいだといわれ、回収はパラシュートで海上や陸上に降ろす。 

RCATは低速標的機と呼ばれるが、CHUKAR-3と呼ぶジェットエンジンを積んだ翼幅が2m弱の高速標的機もある。 

技術試験や発射試験に労務借り上げで参加した僕たちは、この可愛い無人機を見て過ごしたから、これにまつわる話も尽きない。