2008年2月12日火曜日

九州宮崎は酒造元隣の旅館

 マイクロ波を使ったレーダーの苦労することの1つに低空目標の探知がある。
原因はいろいろあるが、一般に使用周波数が高いほど難しくなると言われている。アンテナで作る電波のビーム幅は、光学レンズで作る光の束に似て、細くなるほど地面からの反射エコーと目標機からの反射エコーは見分けやすくなるのだが・・・・・・・いろいろの設計上のトレードオフがあるのだが、それをさて置き、一般にはMTI(移動目標識別技術)というのがある。これは移動目標からの反射電波は、必ずドップラー周波数偏移があるからこの違いを検出するのである。ところが低空になればなるほど、航空機などからの反射は地面からの反射に比べて圧倒的に相対量が小さくなってしまうので識別が難しくなる。
 その頃国の研究機関の試験に「労務借り上げ」であちらこちら試験条件が整った場所に出張してデータを取っていた。試験機は我々が納めたトラックに搭載された移動用のレーダー。レーダーといってもランチャーと連動して小型地対空誘導弾の発射制御をする機能を備えている。
 目標機を識別する試験をする航空機はかっての花形練習ジェット機T33、パイロットはかなり低空を飛ぶのでベテラン航空隊長I大佐が自ら飛ぶそうだ。機材の展開試験は宮崎県新田原(ニュウタバル)基地。天気の日もあり、雨の日もあり、あるときはハチの巣別れの大群にであったり広い飛行場の中で何週か過ごしたものだ。
 中でも思いで深かったのは会社員試験隊が泊まった駅前の旅館であった。老舗の旅館の隣は宮崎が誇る焼酎の醸造元、朝から焼酎の匂いが流れてくる。まだ若かったので今のようには呑む習慣はなかったが、今となってはもっと呑めばよかったと残念。というのは店先に並べてある一升瓶が驚くほど安かった。
 試験の打ち上げを旅館でやったとき、旅館の台所でよく切れるプロの包丁でO君が指先を大きく切って失神した。丁度休日だったが近くの医院に連れて行き、老先生に縫ってもらった。焼酎を少し飲んでいたので「危ないな」とは思ったが、手元が狂ったらしい。
 飛行場は駅前のいわば海岸レベルから坂を上って上の台地にあり海上から見れば「航空母艦」に見えるような立地であろう。雨が降ると飛行場に降る雨水を直接下に流すと水害になるらしく、一旦大きい貯水池に溜めてから徐々に放水する調整池方式になっているらしい。基地前の一っ軒家が酒店で焼酎が置いてあり、親父さんが家の前の松の新芽を摘んでいるのを見て、なるほど家の松もこういう作業が要るのかと思ったのを妙に覚えている。
 新婚の部下U君に来た奥さんからのラブレターを「みどりちゃんのラブレター」と皆で囃したのも昨日のようだ。お子さんももう社会人になっていることだろう。
 なにはともあれ、懐かしい日々である。