2021年1月26日火曜日

(64)草枕スケッチ帖⑤

  世紀の名優と言われたローレンス・オリビエが


演じたシェクスピアーの「リチャード3世」の映画


を見たのはいつのころだったろう。


舞台劇をそのまま映画にしたという。


凄まじいばかりの迫力で、無様で強力な悪の力を


見せつける衝撃がロンドン塔を見て蘇ってきた。


 醜いわが身を王とするために、親や兄弟を次々に


陰謀の限りを尽くし亡き者にし、その妻を盗り、


遂には自ら滅ぼされる勧善懲悪の物語が、この


ロンドン塔の中で起こる。


奥深い地下室の排水溝からテームス川に流される


夥しい血の色や白昼野戦の末、半殺しにされながら


止めを刺されない醜い男の痙攣する断末魔を想像


するに十分だ。


シェークスピアが俳優として出演した劇場が当時の


まま再現されたそうだが、大英博物館に収納されて


いるロゼッタストーンをはじめ古代エジプトの略奪


に等しい巨大遺構の数々や美術品を目の前にすると


パイレーツを祖先にするこの国の中では殊勝なこと


である。


 もっとも、日本だって韓国の博物館を見ると、


この国の規模に遥かにお呼ばないものの、倭寇の


時代からの略奪の実績がないわけではない。