世紀の名優と言われたローレンス・オリビエが
演じたシェクスピアーの「リチャード3世」の映画
を見たのはいつのころだったろう。
舞台劇をそのまま映画にしたという。
凄まじいばかりの迫力で、無様で強力な悪の力を
見せつける衝撃がロンドン塔を見て蘇ってきた。
醜いわが身を王とするために、親や兄弟を次々に
陰謀の限りを尽くし亡き者にし、その妻を盗り、
遂には自ら滅ぼされる勧善懲悪の物語が、この
ロンドン塔の中で起こる。
奥深い地下室の排水溝からテームス川に流される
夥しい血の色や白昼野戦の末、半殺しにされながら
止めを刺されない醜い男の痙攣する断末魔を想像
するに十分だ。
シェークスピアが俳優として出演した劇場が当時の
まま再現されたそうだが、大英博物館に収納されて
いるロゼッタストーンをはじめ古代エジプトの略奪
に等しい巨大遺構の数々や美術品を目の前にすると
パイレーツを祖先にするこの国の中では殊勝なこと
である。
もっとも、日本だって韓国の博物館を見ると、
この国の規模に遥かにお呼ばないものの、倭寇の
時代からの略奪の実績がないわけではない。