三太の家は粉挽き水車小屋だったということに
なっている。
今は青山や三ヶ木の近く道志川と相模川との合流
あたりに、三太旅館が建っているらしい。
その頃、にわかに中学のとき聞いたラジオ・ドラマを思い
出し、冒頭の「三太物語」の本を買ったものとみえる。
光文社創業60周年記念出版されたという「三太物語」
には青木 茂 という人が書いた一連の物語り
「三太花荻先生の野球」、「三太ウナギ騒動」、
「三太ローレライ」、「三太大雷」、「三太カッパ退治」
など全12話が収録されている。
相模湖に近い山あいの小村・道志村を舞台に、腕白で
たくましくて飾り気の無い少年三太が巻き起こす愉快な
騒動の数々・・・とキャッチフレーズがついているが、
読み返すほどに、あのころの貧しくも温かい誠実な
人間模様が懐かしい。
ラジオ・ドラマで放送されたのは、これらのエピソードを
取り込んだものだったのだ。
映画の原作にもなったという(僕は見ていないが)し、
日本が生んだユーモア児童文学の最高傑作とも
言われているらしい。
神奈川県の方言をはじめ、身近な実在の土地で
青木 茂 が語る物語りは、確かに村に行けば三太が
今でも悪戯っぽく生きているように感じる。
青木 茂( 1897~1982)という人は、才能豊かな人で
あったが、若くして結核に倒れ、通学できず、ほとんど
独習で多方面の活躍をしたという。
三太物語りはその三太旅館の前身の宿で書いたといい、
三太は、留、定、花子らの友達のガキ大将であったとか、
三太の祖父「仙じい」は魚つりの名人で、近所の
「音さん」は酒好きのお人好しであったとか、村の
アイドルは新しく赴任してきたきれいで、やさしい
音楽の花荻先生であり、ヘビが大嫌いでよく気絶した
とか、ほとんど空想で人物像を作ったらしい。
驚くべき才能だ。
人物は生き生きと描き分けられていて、今も声が聞こえ
そうな気がするほどである。
光文社から今も発売されているかは調べていないが、
Amazonや楽天などインターネットで手に入れることが出来る。
まだ読んでいない人、読み返してみたい人は、是非、
お読みください。
きっと昔の神奈川県津久井を思い起こして、古きよき
時代を思い起こせるでしょう。