ローマはユークリッドという北の街のリッツ・
グランドホテルに泊まった。
幾何学のユークリッドと関係があるのかどうか、
ホテルで聞いてみたが、さっぱり要領を得な
かった。
ギリシャ時代のユークリッドで起こったと言わ
れる街と、ローマと言っても丸きり時代も場所
も違う。
すぐに故事来歴を尋ねたがるのも悪い癖かも知
れない。
バールに行ってパンやコーヒーやビールを飲む
という術を覚えた。
イタリア人は結婚してしばらく経つと奥さんが
旦那より遅く起きるようになり、旦那の出勤前
の朝食は子供と一緒にバールに寄ってコーヒー
とパンを摘まんでいくようになるという笑い話
があるそうだ。
立ち食い蕎麦で済ますようなものだろう。
しかし、真に受けるのは禁物である。
日本に帰ってから家で話そうものなら、バンソ
ウコウを張って出社する羽目になりかねない。
それにしても、ローマ人も朝が早い。
夜は遅くまでガチャガチャやっているのに、朝
は早くから車は急ぐし新聞スタンドやバールは
開いている。ローマ時代のローマ人もこうだっ
たのだろうか。
初めてではないが、フォロ・ロマーノや住居の
遺跡を見て、ここを駆け抜けて行った遥かな
歳月・時空への思いに身震いするのである。