2021年2月13日土曜日

(70)草枕スケッチ帖⑪





 ローマはユークリッドという北の街のリッツ・


グランドホテルに泊まった。


幾何学のユークリッドと関係があるのかどうか、


ホテルで聞いてみたが、さっぱり要領を得な


かった。


ギリシャ時代のユークリッドで起こったと言わ


れる街と、ローマと言っても丸きり時代も場所


も違う。


すぐに故事来歴を尋ねたがるのも悪い癖かも知


れない。


バールに行ってパンやコーヒーやビールを飲む


という術を覚えた。


イタリア人は結婚してしばらく経つと奥さんが


旦那より遅く起きるようになり、旦那の出勤前


の朝食は子供と一緒にバールに寄ってコーヒー


とパンを摘まんでいくようになるという笑い話


があるそうだ。


立ち食い蕎麦で済ますようなものだろう。


しかし、真に受けるのは禁物である。


日本に帰ってから家で話そうものなら、バンソ


ウコウを張って出社する羽目になりかねない。


それにしても、ローマ人も朝が早い。


夜は遅くまでガチャガチャやっているのに、朝


は早くから車は急ぐし新聞スタンドやバールは


開いている。ローマ時代のローマ人もこうだっ


たのだろうか。


初めてではないが、フォロ・ロマーノや住居の


遺跡を見て、ここを駆け抜けて行った遥かな


歳月・時空への思いに身震いするのである。