ラ・スページアという北部の街から特急列車に乗っ
てローマまで団体の列車旅行である。
何よりも大変だったのが人数分の重い大型ラゲッジ
を低いホームから高い列車のデッキまで積み込むこ
とだった。デッキの入口は人一人の狭さだし、他の
客もいるは、発車時刻は迫るは、通路は狭く大量の
荷物を一列に並べるのがやっとで、通路の端から端
まで大型ラゲッジが並びお客さんに迷惑を掛けたり
した。旅行社の吉川さんはもう懲り懲りだと思った
ことだろう。
しかし、列車旅は飛行機と違い楽しいハップニング
が起こる。
英語の出来ないイタリア青年とイタリヤ語の出来な
い我々3人のコンパートメントに、後からスペイン
語とイタリア語と英語の出来る髭のアルゼンチン
青年がやって来た。話すほどに彼はオペラの一員で
NHKや神奈川県民ホールで「アイーダ」上演に加わ
わったという。それではと、兵士の合唱を口ずさん
だらイタリア青年も「ベルディはイタリアの国歌に
もなっているんだ」と、期せずして大合唱になった。
映画「終着駅」のローマ・テルミニ駅に着くまで、
陽気な車掌さんまで巻き込んで、肩たたき合う仲に
なったのは言うまでもない。