2007年8月24日金曜日

多機能・多目標の発想

 フェーズド・アレイ・アンテンナの特長を生かす多機能・多目標化の要求に応えるには、すでに前回の特殊送信機の実績から、タイム・シェアリング方式しかないと考えてはいた。ただ問題は捜索レーダー・機能と追尾レーダー機能とを時分割で行うという「多機能」を実現するには困難な問題があった。

 毎日毎日、隣の課にいた入社2年後輩の秀才O君とあれこれ考えあぐねていた。O君は大学時代からコンピュータ工学に長けていて、デジタル時代の草分けのような存在だった。現に隣の課も、そのころ台頭してきつつあるコンピュータとデジタル関連機器の設計をしていた。

 捜索レーダーは捜索する範囲の絶対レンジが不可欠であるから、普通はレーダー送信間隔は(パルス送信間隔)距離150mあたり1μ(マイクロ)secの時間が必要である。すなわち60kmの距離範囲をカバーするには、600mあたり4μsec、60kmを監視するなら400μsec必要になるのである。
 その間に追尾機能を入れるとなると、工夫が要る。追尾も間歇的に続ける必要がある。この問題はまだ前例がなく、やってみなくては解らないとO君と覚悟してトライした。さすがに上長たちも心配だったと見え、アメリカの協力会社に追検討を依頼してくれた。結果は、うれしいことに、それ程の危険要素はなさそうであった。
 以来、何年かはいろいろの問題点解決と調整で、曲がりなりにも今をときめく旧SAM-Dといわれたレーダーと時期的には遜色ない発展をしてきたと自負している。遠い昔の話になったが。