2021年8月9日月曜日

(92)リハビリ日記⑮ 話が人に通じないと言う切なさとは?

  この年になるまで、敗北や失恋、悔


しい思いも人一倍味わってきたことは


自分以外にはなかろうと、変な自負を


糧に生きて来たという思いがあった。


 16年前、2004年5月、初めて脳梗


塞になって足が萎え歩行困難になり、


利き手の右手が痙縮して使えなくなっ


た。


 昔は脳梗塞もくも膜下出血も含めて


脳内出血も分からないまま脳卒中と言


って生きていたら絶対安静と言う処置


が取られていた。


 幸に、僕らの時代はコンピュターを


使った電磁透視合成のCT画像が撮られ


るような時代になっていて脳梗塞を脳


卒中とは言わないし、社会復帰・いわ


ゆるリハビリも、緊急期を過ぎれば絶


対安静ではなく出来るだけ早いうちに


リハビリを始めるようになっていた。


 当時、脳梗塞発生時に出来るだけ早


く投与すれば、血栓が溶けて後遺症が


軽くなる米国で開発された新薬の日本


での認定がされていなかった。


 救急入院した横浜市の南部病院でも


リハビリ科は出来たばかりであったで


あろう。


 と言うのは日本で理学療養学会が生


まれたのが1962年ごろ、理学療養士


が生まれたのが1967年ごろと言うから


病院にリハビリ科が出来るまで相当な


時間がかかったのであろう。


 まず萎えた足は床の上から両ひざと


左手の3点をしっかり床に確保して、


起き上がる3点支持法を教わって、平


行棒の間に立って歩く練習、階段上


り下りなど3か月もかかった。


 腕の方も机の上に置いたタオルに


両手を置き、そのまま腕を伸ばして


向こう側の端まで押し進める。


 シャツを着る、ボタンを架ける練


習。


 小さい積み木を動かす練習など今


でもやている練習が主であった。


 言語聴覚士は恐らく制度になった


のが2000年当初だったろう。


 初任の若い言語聴覚士がいたばか


りだった。


僕の症状が顔の右半面に垂れ下がり


はあったが、軽かったのであまり苦


労しなかった。


 しかし、17年目に再発した今回は


随分事情が違った。


 基本の右麻痺に違いはないが、今


度は言葉の発音が出来なくなった。


同時に食べ物飲み物の飲み下しが今


までのようには行かなくなった。


 トロミで流動時間が遅くないもの


は気管の方に送られてしまう、いわ


ば誤嚥が通常化してしまった。  


 が、誤嚥はまだ良い。


トロミ剤を加えれば、何とか喉を通


る。


 言葉の方は発音が正しくないと伝


わらない。


大きい声で発音しないと聞き取って


貰えない。


息が切れて大きい声も出ない。


 骨盤矯正用のコルセットを胸まで


装着していると、肺活量も足りない


から声も出ないし、便も出ない。


 筆話が最後の手段だと思われるが


老衰で力も劣ろえた右腕の字は崩れ


てきた。


 元来16年前の後遺症対策手段に絵


と字は左手で練習しようとしたが、


書いた字を見ているとこれから左手


で書く字が右手字の訓練してきた経


験を超えられないと決心して、字だ


けは右手を取り戻そうと決心して、


まず自分の名と住所が右手で書ける


まで訓練し、その内思い立って写経


に使われる般若心經の写経用紙を使


って猛訓練した。


そうすると、字は右手と言う自然体


が生まれていた。


 今度の再発症で養老OT.先生と体


を立ち位置に縛り付けるスタンドに


固定しながら右手鉛筆で般若心經を


模写してみたが、何回かに分けて全


部模写できた。


 声の方は練習で、そう上手く行く


かはわからない。


箱根のバスでコロ付きラッゲージの


転がりを助けてやった上海勤めのマ


レーシアの華僑青年と台湾漢字の筆


談交えの英語会談で中国の現代絵画


事情を知ったが、漢字の発音は出来


なかったから、言葉とは言えない。


 また、2,3年前に英語発音練習用


に買ったpocktalkと言う手持ち翻訳


機を使って発音練習が出来ないか?


などアイデアもあるが、まだそんな


時点ではない。


 日本語ではパ・ラ・カ・などの舌


の先が前歯の裏側にあって発音して


舌が前方に跳ね上げるか、奥の方に


移動するかが上手く行かないと聞き


取れない発音が難しいとされている。


 この練習も大切だろうが、面白く


ない。


 般若心經を唱えてみるか、テレサ


テンの「つぐない」をうたってみる


か、シナトラの「マイウエイ」の英


語にするか、怪しいスペイン語の


「マラゲーニア」か「キサス・キサ


ス」か、面白い言葉発声に挑戦して


みたいものだ。